
練り切りの花びらに刻まれた繊細な筋や、思わず見とれてしまうほど美しい和菓子の模様。あの意匠は、いったいどんな道具から生まれているのだろう――そう感じたことはありませんか。
和菓子道具の歴史は、実は縄文時代にまで遡ると言われています。
当時作られていたのは「団子」で、木の実を天日干しして砕いて粉にし、きちんとあく抜きをしたうえで丸めて作られていたとされます。
使われていたのは石臼や石槌などで、これらが最も古い和菓子道具といえるでしょう。
そこから長い年月を経て、和菓子づくりの道具は驚くほど多彩に進化してきました。ここでは、現在も和菓子づくりに使われている道具の数々をご紹介します。

主な和菓子道具
和菓子道具と一言で言っても、その種類は実に多彩です。
まずは、代表的な道具から見ていきましょう。
木杓子(きじゃくし)
木でできた杓子(しゃくし)で、頭が丸く、中央が少しくぼんでいる皿状の木に柄が付いています。
ご飯を盛る時にも使いますが、和菓子づくりの際には主に餡を練ったり生地を混ぜたりする時や裏ごしする時などに使います。
竹べら
竹を削って作ったへらです。
竹はしなうため細かい作業がしやすく、生地で餡を包んだり、菓子の表面に模様を付けたりする仕上げにも使われます。
三角べら
一見するとへらには見えず、先が細く削られた木製の三角柱です。
押し棒とも三角棒とも呼ばれます。
和菓子の見た目を仕上げる専用の道具で、練り切りなどに特殊な筋を付けたり、模様を付けたりする際に使われます。
千筋板(せんすじいた)
木の板の表面に細い平行線が無数に刻まれていて、筋模様を付けることができます。
和菓子の生地に押しつけると均一に線が付き、手を加えると流水のデザインなども形作ることができます。
特殊な和菓子道具の一つです。
金べら
鉄板焼きなどでも使われる金属製の箆で、焼いた和菓子を鍋からはがしたり、ひっくり返したりする時に使います。
作る和菓子によってさまざまなサイズや形があります。
どらさじ
「どら」という言葉からもわかるように、どら焼きなど焼き菓子を作る時に使います。
金属製で、主に生地をすくい、鉄板に落として均等の厚みに広げる時にも重宝します。
平鍋
焼き菓子を作る時に使う道具で、鍋というよりは平らな銅板です。
ガスコンロの上に置き、そのうえでさまざまな生地を焼く重要な役割をします。
和菓子にほかの食材の香りなどが付かないこと、熱が均等に早く全体に伝わることから銅が使われます。
抜き型
ステンレスのクッキー型などでもよく知られていますが、和菓子づくりでは桜や梅、イチョウ、もみじなど日本の花木がモチーフの抜き型が多く使われます。
生地に押し当てて形を抜き取る道具で、練り菓子に欠かせません。
木型
主に桜の木で作られた型で、生地を押し当てて模様や形を写し取るのが特徴です。
鯛などのおめでたい型や季節を感じる花木の型などがあり、基本的に職人の手彫りによるものです。
焼き印
和菓子の表面に熱で文字や絵柄を入れる道具です。
焼き菓子に多いですが、店の屋号などを入れることも多いです。
陶器流し型
ゼリー型やプリン型のように生地を流し入れて使う独立型ですが、陶器でできています。
錦玉羹や水羊羹などに使われ、日本古来の和柄やひょうたん、松竹梅などさまざまな模様があります。
樋型(といがた)
陶器流し型が一つひとつの模様を楽しむ型であるのに対し、樋型はとよ型、とゆ型とも呼ばれ、主に羊羹をひとまとめに流し入れて固めるための型です。
長方形だけでなく、雨どいのように半円の筒形で足が付いているものなどもあります。
角せいろ、竹すだれ
もち米を蒸すための木枠です。
饅頭や赤飯を炊く時に使い、せいろの下にすだれを敷きます。
細工鋏
練り切りなどを作る時に使用することもある糸切狭のような道具です。
細長く、先がとても繊細に作られており、刃先がストレートのものとカーブしているものとがあります。
さわり鍋
餡を作る時に使われ、底がまん丸なのが特徴の鍋です。
とても大きなものもありますし、こぶりな坊主鍋と呼ばれるものもあります。
小豆煮かご
小豆を煮る専用のかごです。
全面が金網で覆われている入れ物で、中に小豆を入れてずんどうの中にすっぽり入れて煮ます。
和菓子を食べるための道具
和菓子は食べる時にも専用の道具があります。
せっかく見た目も美しい和菓子をいただくなら、ふさわしい道具でいただきましょう。
菓子楊枝
和菓子を切ったり、和菓子に刺したりすることができるのが菓子楊枝です。
幅と厚みがあり、中でも「黒文字」という木材を使ったものが高級品です。
黒文字はほのかな木の香りがあり、菓子をいただく時にその香りも楽しみます。
菓子皿
和菓子に合う皿は漆器です。
朱塗りや黒塗り、形も半月型や丸型などさまざまあります。
懐紙(かいし)
お茶席などでは、和菓子を乗せる時に懐紙を使うこともあります。
四隅を少しずらして二つ折りにして和菓子を乗せますが、祝い事ではずらす向きを右下がりに、不祝儀時には左下がりに折ります。

受け継がれてきた道具とともに、和菓子の世界へ
和菓子を作る時には、実にさまざまな和菓子道具を使います。
ほかにはない特殊な道具も多く、専門店で手に入れれば家庭でも本格的な和菓子づくりに挑戦できるでしょう。
さらに、いただく際にも菓子楊枝や菓子皿、懐紙といった専用の道具を用いることで、和菓子の魅力を余すことなく楽しむことができます。
基本的には、使い方自体は難しくないのが和菓子道具の特徴です。ぜひお気に入りの道具を見つけて、しっかり使い込んでみてください。
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