文化・マナー・習慣

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最古のこけしが作られたのは700年代|「宮城伝統こけし」の歴史

2018年10月11日

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日本全国にはさまざまな地域の伝統文化を伝える工芸品が残されています。そのなかでも昔から東北みやげとして親しまれているものに宮城伝統こけしが挙げられます。
丸い頭に円筒形の胴体を付けただけという、シンプルな様式を守りながらも愛らしく飽きのこないデザインは、東北文化の粋をあらわすものとして人気です。その成り立ちを訪ねてみると、意外な発見があるかもしれません。

宮城伝統こけしの歴史とは

宮城伝統こけしの歴史は今から1300年以上前の奈良時代にさかのぼるといわれています。時の称徳天皇は鎮護国家を祈念し、陀羅尼経を100万巻ほど木版印刷した上で、小さな木製の塔のなかに詰めて諸国の寺院に奉納しました。これは百万塔陀羅尼と呼ばれ、日本はおろか世界最古の印刷物としても知られるものですが、塔の部分が実はこけしの起源とされています。
その後、平安時代に文徳天皇の皇子の小野宮は世をはかなんで近江国に隠棲しますが、そのとき周囲の住民に木工を教えたのが、木地師と呼ばれる伝統の木工職人のはじまりです。木地師たちは小野宮の権威により、日本各地の山々を自由に往来する特権を得て、良材が得られる地域を探して散らばります。
そして江戸時代の享保年間にもなると、東北地方の湯治場を訪れる人たちへの土産物、特に子供向けの玩具としてのこけしが盛んに作られるようになり、これが宮城伝統こけしへと発展したものとされています。

さまざまな顔立ちのこけしたち

こけしにもさまざまな種類がある

宮城伝統こけしは、宮城県の中南部から山形県にかけてが名産地とされています。この地域のなかでも実はいくつかの系統があり、系統ごとにデザインが微妙に異なります。
遠刈田系は遠刈田温泉を中心に発達したこけしのルーツに当たり、頭部が大きく、鼻筋が通った大人びた顔立ちが特徴です。胴体には菊や梅などをモチーフにした模様が描かれます。
弥治郎系は白石市の鎌先温泉近くの弥治郎地区が産地となっており、絵付けは比較的シンプルですが、頭部にろくろ線を施し、その下にカラフルな髪飾りが描かれるのが特徴です。
鳴子系は鳴子温泉が中心で、頭部には前髪や水引のような飾り模様が描かれ、胴体も中ほどが細く加工されるなど、全般的に写実的な印象で気品が感じられます。
作並系は作並温泉で生まれたものが、仙台をはじめとする都市部に伝播したもので、シンプルで大胆なデザインが多く、子供が握って遊ぶのに適した細い胴体になっています。
肘折系は宮城から伝播して山形県の肘折温泉で発達したもので、頭部のおかっぱ頭、胴体の重ね菊の模様などの力強いデザインが特徴です。

こけしはかわいい顔をしています

今では経済産業省の伝統的工芸品に

経済産業省では、一定の地域で伝統的な技術や技法をもって製造されている工芸品を、日本固有の伝統を継承し、国民生活に豊かさと潤いを与えてきた産業のひとつとして奨励する目的で、法律にもとづく伝統工芸品に指定する制度を導入しています。宮城伝統こけしも昭和56年にその伝統工芸品の指定を受けており、原木の段階から木挽き・絵付け・仕上げまでの段階を昔ながらの方法で一貫して職人の手で行っている製品には国の伝統工芸品マークが付与されます。
日本を代表する伝統工芸品として国内外から注目される宮城伝統こけしは、現在では店頭での土産物販売のほかにも、地元にこけし館・こけし村などの展示施設がいくつか誕生し、観光客が思い思いに展示品を鑑賞するとともに、絵付けなどの体験もできるようになっています。ろくろまつりなどのイベントも毎年定期的に開催されており、温泉客などを対象とした製作実演や展示販売があります。

こけしの行灯

日本人にとっては身近な玩具や伝統人形として知られるこけしですが、その歴史は古く、発祥の地とされる遠刈田温泉にはじまり、さまざまな系統へとバリエーションが広がったことがわかります。本場の宮城伝統こけしは今では経済産業省の伝統工芸品の指定を受けて、職人技にもますます磨きがかかっています。
もしも産地を訪れる機会があれば、展示館やイベントなどを巡ってみるのもよいでしょう。

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