21世紀に入ってから世界は大きく様変わりした。それ以前は外国人と聞くと欧米の人々を思い浮かべたものだが、近年では韓国・台湾・中国・タイなど東アジアからの訪日客も増え、日本観光のグローバル化はさらに加速する一方だ。
それを証明するようにも2003年には521万人だった訪日外国人客も2013年には1,036万人、そして2018年には3,119万人と驚異的に増加している。
世界中の人を惹きつける日本の魅力は今や歴史や文化、伝統芸術、武道といった古来からのコンテンツだけにとどまらない。マンガやアニメ、電子機器、ファッション、アートなど多彩な情報文化を発信するスポットとして認識されている。
中でも、美味しさと健康、そして美しさを追求した和食は国際的にも注目の的だ。ユネスコ無形文化遺産への登録こそ2013年と早くはなかったが、日本の食はすでに国際的な存在として多くの国々に受け入れられている。
寿司にいたってはSUSHIとして各国でオリジナルが開発されるなど料理の1ジャンルとなった感さえある。だが、そんなグローバルな進化を遂げている和食だからこそ大切にしたいことがある。そこで今一度基本に立ち返り、和食とはなにか、その成り立ちやあるべき姿を学ぶ必要があるのではないだろうか。
和食の過去・現在・未来を学ぶ3冊の本
日本の文化である和食について私たちは意外なほどに無知だ。改めて日本と食を考える時、参考になるのは優れた知識をまとめた書ではないだろうか。私たちが海外へ旅行する時、また逆に海外から客を迎える時、異文化交流の機会が増えるにつけ、人類共通の文化である食は互いの民族アイデンティティを伝えるためのツールでもある。その時、正しい和食の姿を他国の人々に伝えるためにも、和食についての知識を持つことは有意義なことに違いない。そこで日本人としての舌の記憶を学ぶためにふさわしい本を何冊か紹介してみよう。
角川ソフィア文庫「日本人はなにを食べてきたか」
和食を知るためには日本人と食について学ぶ必要がある。「日本人はなにを食べてきたか」は縄文・弥生時代から現代まで、社会のシステムのなかで日本人はどんな食べ物を選び、どんな料理や文化をかたちづくってきたのかをまとめた本だ。中世から近世にかけて築かれた「米社会」と、文化としての料理の発展など、祭祀・儀礼や宗教、政治・制度、都市の形成といった日本の歴史が育てた和食の誕生と発展について学ぶには最適の書といえるだろう。
思文閣「和食とは何か」
和食のユネスコ無形文化遺産に登録されたのを受け、一般社団法人和食文化国民会議(略称:和食会議、会長:熊倉功夫)が総力をあげたブックレットシリーズの一冊。和食の典型的なスタイル、和食文化というべき食べ方、食器、しつらい、マナーといった和食についての基本。さらに和食材、調理法、盛りつけなど技法に言及したテキストでもある。郷土料理を含めた広義の和食文化を視野に食育、地産地消、年中行事などとも絡めながら、和食文化の保護・継承を通して和食の再発見を試みる内容となっている。また、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるまでの経緯をたどり、今後の保護継承を見通した提言をも盛り込まれている。
新潮社「和食の知られざる世界」
和料理研究者として知られる辻静雄の息子、辻調グループ代表辻芳樹による一冊。世界が賞賛する「和食」の未来に著者が抱く大きな希望と一抹の不安とはなにか。なぜ海外の一流シェフは和食に驚嘆したのか? 料理を最高の状態で味わうコツとは? 良い店はどこが違うのか?などなど。和食の海外進出に伴う海外での成功例や和食界のニューウェーブともいうべき最先端の取組みなど、これからの和食が進むべき方向や後進を育てる教育についてなど、世界の食を俯瞰的に見つめ続けてきた著者だからこそ書けた、和食の真実が明らかにされる。
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