最近、地方のコマーシャル、通称グローカルが面白い。なかでも話題を読んでいるのがこれまでマジメ一辺倒のイメージが強かった自治体のPR動画だ。ネットで炎上騒ぎを起こしたうなぎと女の子の作品やフランス語に聞こえる方言の作品などがその一例と書けば、あぁあのと思い当たる人も多いだろう。このブーム、youtubeの浸透もあり、まだまだ続きそうな勢いだ。地方創生という掛け声やオーガニックな食生活を求める声、ふるさと納税・地方へのIターンなど、市民の地方町村へ向ける関心も高まっている。 そこで今回は、自治体が提供する情報サービスのあり方などについて考えてみた。
みんないっしょで責任回避の是非
ゆるキャラブームもそうだが、自治体の情報発信はなぜみんな同じ方向を向いてしまうのだろう。自治体の情報発信にはテーマが同じと言うだけでは説明できないほど似たような展開が多い。民間でも2番煎じ、3番煎じなどはいくつも例があるが、さすがに全員が同じ方向を向くケースとなるとそれなりの抑制が働く。言い換えれば数多くの後追い企画の中に埋没してしまうリスクを承知しているからだ。企業がリスクに敏感になるのに対し、自治体ではゆるキャラの人気が出なかったとしても“残念でしたね”の一言で、次年度の予算会議の始まる頃にはさほどの問題とはならない。いや正確には問題となるのだろうが、営業成績となって影響を及ぼす企業ほどの危機感はない。 次に成功例があると予算が通しやすいという視点がある。説明も“話題になった◯◯風の”と言えば話が早く、企画も通りやすい。似たような自治体の事例を見ているとなんとなく“わが町でもできそう”と思ってしまうというのもある。 結果として出来上がったものは世間で言うところのパクリに近いものとなるケースが多いのだが、多分担当者にその意識はない。 とまぁ、このような理由で、大胆?で面白いPR動画やゆるキャラが氾濫することとなるのだ。 だがしかし、中には出来栄えも見事で、炎上もせず、成果を上げている動画もある。そのいくつかを紹介してみよう。
愛知県安城市
まち紹介動画「JANG DA-RA RING(じゃんだらりん)」
全編がダンスと歌の展開で進むノリの良さが特徴。安城へやってきた少女ゾンビが街の様々な魅力にふれることでどんどん健康になり最後は・・(ネタバレ自粛)なストーリー。オチのひねりがいい感じだ。
まち紹介動画「JANG DA-RA RING(じゃんだらりん)」
栃木県大田原市
移住促進PR動画「子どもの笑顔が育つまち」
親子の姿を通して街の様々な顔を紹介するオムニバススタイル。スマートフォンで撮影された映像が効果的。オチは「ちょっと長い帰り道も、家族を想う時間になる」というラストのコピーも効いている。
青森県
PR動画「ずるい街、青森県」
姉妹の違いに焦点を当てたストーリー仕立て。都会でおしゃれな生活を楽しむ姉、田舎暮らしの自分と姉を比べてズルいとグチをこぼす妹。でもどちらも住んでいるのは‥。都会と田舎両方の良さが調和して青森の魅力を上手にまとめ上げている。
岡山県
観光プロモーション・県PR・移住促進・企業誘致など各種
ストリートビュー、タイムラプスなどで見せる観光案内あり、ちょっと笑えるドラマ仕立てありの移住促進&企業誘致などバラエティ豊か。コメディータッチのハレウッド動画(晴れの国岡山+ハリウッド)シリーズでは俳優で映画監督の前野朋哉(AU三太郎シリーズの一寸法師役)を起用したことでも話題となっている。
まとめ
youtubeなどで動画発表の敷居が低くなったこともあってか、自治体の職員が制作したものから大手代理店に依頼したものまでレベルや意識にも大きな差があると感じられた。スマートフォンの動画性能向上もあり、市民参加での動画づくりを行っている市町村もある。また地域のPR動画という意味では、信濃毎日新聞が鉄拳を起用したパラパラマンガ「家族のはなし」は秀逸。自治体でもパラパラマンガで動画にチャンレンジしているケースがあるが、鉄拳と比較してしまうせいかどうしても粗が目についてしまう。工夫と予算の兼ね合いが今後の課題と言えそうだ。
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