2018年7月から2019年2月までの日程で、芸術の都フランス・パリを中心に開催されていた「ジャポニスム2018」が、パリ市民の間で大きな話題となった。
19世紀末のヨーロッパアート界に衝撃を与えた浮世絵・琳派・美術工芸などの日本美術=ジャポニスムは、ゴッホやモネ、ドガなどの作品に多大な影響を与えた。今回イベントタイトルとして使用されているジャポニスムはフランス語のJaponismes。開催地というだけでなく、ジャポニスムという大きなアートの潮流がフランスからヨーロッパ全土に広がっていった事実に由来する名称だ。
この日仏両国におけるアートの交流をさらに進め“世界にまだ知られていない日本文化の魅力”を紹介する大規模な複合型文化芸術イベントが「ジャポニスム2018」だ。
1世紀を超える時を経て、再びパリ、ヨーロッパに発信される現代日本のクリエイティビティは、新たな驚きとともに進化するジャポニスムに魅力でふたたび世界を魅了することが期待されている。
「ジャポニスム2018:響きあう魂」
19世紀ジャポニスムの洗礼が大きかったこともあり、その後もフランスでは日本的な価値観や美意識への関心が衰えることはなかった。茶道の茶室にでも由来するのだろうか、日本風のインテリアを指す造語として「タタミゼ(畳の上の暮らし)」という言葉さえ残っている。もちろん、現代日本を代表する文化としてのマンガやアニメも、ヨーロッパでいち早くその素晴らしさを認め、受け入れたのはフランスだ。
ではそのフランスで世界の高感度人間たちに披露される今回の日本とはいったいどんなものだろう。イベントのプロデューサー的な役割を担う独立行政法人国際交流基金の資料には、以下のように記されている。
『古くは日本文化の原点とも言うべき縄文から伊藤若冲、琳派、そして最新のメディア・アート、アニメ、マンガまでを紹介する「展示」や、歌舞伎から現代演劇や初音ミクまで、日本文化の多様性に富んだ魅力を紹介する「舞台公演」、さらに「映画」、食や祭りなど日本人の日常生活に根ざした文化等をテーマとする「生活文化 他」の4つのカテゴリーで東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を前に、日本各地の魅力をパリに向け、またパリを通して世界に向けて発信します 』
8ヶ月というスケジュールの中で玉手箱のように次々とまだ見ぬ日本を取り出そうというこの企画、バロン・サツマの通称で知られる薩摩治郎八や藤田嗣治など、かつてパリを愛し、パリに愛された日本人たちの目にも意欲的な試みとして映りそうだ。
フランス大統領も絶賛
日仏外交関係樹立160年という節目の都市に開催される「ジャポニスム2018」について、フランス側の声はどうだろう。フランス共和国大統領エマニュエル・マクロン氏のメッセージから一部を引用してみよう。
『日本文化はフランスの最も著名な前衛芸術家たちに多大なる影響を与えましたが、我々の社会が大きく変化した今日においても、日本の創造的な芸術家たちは新たな世代の熱狂を喚起しています。常に新しいものを追求するフランスの大衆と芸術家は、現代日本を発想と革新の持続的な源泉と見ています。
あらゆる日本の創造性の豊かさが、フランスで最も権威ある文化施設で紹介されるでしょう。フランスは「ジャポニスム2018」という冒険に一緒に取り組み、この事業の成功を保証するために自らのノウハウの卓越性を分かち合いたいと考えました』
東と西、異なる2つの文化のめぐり逢いから始まる新しい世界。未来創造のプラットフォームとも言うべき「ジャポニスム2018」。そのアートシーンのエッセンスはインターネット(https://japonismes.org/reports/summary)でも垣間見ることができる。
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