日本は、明治維新から外国の文化を取り入れて近代化を果たしました。また、近年では観光立国として外国人観光客の受け入れを積極的に推進しています。しかしながら、外国と交流することに対して、「日本文化が失われる」とか「日本がダメになる」などの否定的な意見を言う人も少なくありません。今回の記事では、本当に外国との交流で日本文化が失われるのかについて解説をしていきます。
「外国との交流で日本文化が失われる」とはどういうことなのか
衣食住の変化を見れば、外国との交流により大きな変化を遂げた近代とそれ以前の違いが明確にわかります。日本の伝統的な衣装といえば着物ですが、多くの人は着物を着るのは結婚式・成人式などのイベントのときぐらいです。日常的に日本人が着る衣装は、洋服が主流になっています。食事も、食ではなく洋食が中心という人が大半です。住まいについて見ていくと、日本家屋が少なくなり高層マンションや洋風の戸建て住宅が次々と建てられています。都会で古い日本文化と触れ合える場所は、相当に少なくなっています。このような変化が、「外国との交流で日本文化が失われる」という意見の根拠です。
そうした意見は一見すると正しいようですが、変化の持つ意味を理解すれば正しくはありません。古くから日本は外国文化を取り入れて、国家を形成し発展をしてきた国です。西洋の文化も、シルクロードや南蛮貿易を通じて、少なからず入ってきています。明治維新をきっかけとする近代化は、日本文化を失わせたと思うかもしれませんが、社会を時代にあわせて必要なアップデートさせただけに過ぎません。それは実に日本らしいやり方です。
外国文化を取り入れることで、日本がダメになるのかという意見自体も正しいとは言えないでしょう。衣装について言えば着付けのやり方や作法を学ばなければいけない着物よりも、気軽に着られる洋服で過ごした方が人々の生活は楽になります。産業に注目すれば、外国の技術を取り入れることで様々なモノを大量生産できるようになり、人々が安くモノを買えるようになりました。そういったことからも近代化は、日本文化を一方に破壊する行為ではありません。人々の生活をより良くしようと努力してきたことの積み重ねが、社会のあり方を変えたというだけです。
日本文化とは、古くから外国文化を取り入れて発展してきた文化です。それにも関わらず「外国との交流で日本文化が失われる」という意見を持つ人がいるのは、日本はこうあるべきだという固定観念を持つことに原因があります。固定観念というのは、室町時代や江戸時代から続く伝統こそが揺るぐことのない「日本らしさ」だと信じることです。そういった固定観念を持つと、人々の生活がどれだけ豊かになろうとも社会の変化に寂しさを感じてしまいます。
時代に合わせて古い日本文化を残す
外国との交流で日本が変わっていくことに否定的な意見を持つ人がいても、皆が一斉に洋服から着物に戻ることはないでしょう。また、スマホやパソコンがなければ、現代社会は成り立ちません。グローバル化・IT化が進む現代社会において、時代に逆行することは困難です。そうした時代で、古い日本文化を残したいのであれば、時代にあったやり方を模索する必要があります。まず、日本文化が失われつつあるのは、商売として成立しないとか後継者がいないといったことが直接の要因です。その点で、外国との交流は大いに役立ちます。例えば伝統的な焼き物や織物は、外国からすれば「日本」を感じさせる品です。日本を訪れる外国人観光客には、魅力的なお土産になるでしょう。外国に向けて売り込みたいモノをアピールすることで、訪日したときに買い求めようという動きが活発になります。
伝統的なモノの価値を認めてもらうのは、外国人観光客だけではありません。日本にも素晴らしいモノがあることを知らない日本人に、アピールすることも必要です。その際にも外国から評価されていることが役立ちます。外国の有名なガイドブックなどで評価されると、権威を重んじる日本人の心は動きやすいです。そういったアピールをきっかけに伝統的なモノを認知してもらい、品質の良さを確認してもらえば安定した売上を期待できるでしょう。外国人観光客に加えて日本人もこぞって買い求めるようになれば、商売として成功です。
商売として成立するようになれば、後継者問題も改善できます。現役世代が生活するのも厳しいという状況であれば、後継者が欲しくても人を育てる余裕がありません。しかし、外国人観光客に評価されることで、売上が増えれば後継者を育てられます。場合によっては、伝統産業に興味がある外国人が後継者になりたいとやってくることもあるでしょう。後継者の育成では、今の時代に合わせてやり方も検討した方が良いです。例えば、後継者育成を行うための学校を、職人同士が集まって設立すれば人が集まりやすくなります。
外国との交流で日本は豊かになる
外国との交流で日本文化が失われるとイメージする人もいますが、変化は「悪」ではありません。変化しようとも本質的に「日本らしさ」は残りますし、人々の生活は良くなります。ただ、その変化の中で伝統的なモノが姿を消すこともあります。それを防ぎたいのであれば、外国との交流を活かして、商売のやり方や後継者の育て方を変えていく努力が必要です。
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