日本が世界に誇る漫画やアニメ、そのルーツはどこにあるのかは古くから議論されている問題です。
江戸時代の絵画に起源を見出すものや米国の文化に見出すものなど議論は分かれていますが、最も有名な起源に「鳥獣人物戯画」があります。
今回はこの絵画を例に取り、日本文化や漫画、アニメとの関係を関係を探ってみましょう。
「鳥獣人物戯画」とは
日本文化を代表する絵画である鳥獣戯画は正式には「鳥獣人物戯画」といい、平安時代から鎌倉時代に成立したと考えられています。
年代に幅があるのは何巻にも渡る作品なためで、これは複数の作者により創作されたものです。
作者の一人は鳥羽僧正覚猷(とばそうじょう・かくゆう)と考えられており、彼は戯画の名手です。
それでは内容について触れていきましょう。
鳥獣戯画は甲・乙・丙・丁の全4巻です。約800年前の書物であることから、断片や脱落は多数見つかっており「断簡」と呼ばれます。
また、鳥獣戯画を模写したものは模本です。全巻を通して共通するモチーフとして動物を戯画的に書いている点が挙げられます。これが鳥獣戯画と呼ばれている所以です。
特に兎や蛙、そして猿は頻出する動物で、彼らが当時の世相を演じています。
非常に生き生きとした描写で、巻物であることからストーリーがあるように読めることも大きな特徴です。
漫画とアニメとの関係は?
なぜこの戯画は漫画やアニメのルーツとされるのでしょうか。
それは戯画が日本最古の漫画と呼ばれているからです。
すでに触れたようにこの書物は巻物で右から左へ読むことができます。
そのなかで動物たちはコミカルかつ生き生きと表現されるわけですが、まるで漫画作品を読むように鑑賞できます。
実は効果線や吹き出しとといった漫画に独自に用いられる技法も作品にはあって、ストーリーもあります。
兎はお調子者で、蛙は熱血キャラのようにキャラ付けもされていてまるでギャグ漫画作品です。
鳥獣人物戯画は昔から大切にされていた戯画でしたが、漫画文化の発達によって再評価が進みました。
人気アニメ制作会社が鳥獣人物戯画を映像化したり、数々のグッズ販売も行われています。
歴史のある作品ですが、漫画やアニメに親しんでいる私達なら比較的気軽に鑑賞できる作品です。
当時の世相や歴史、日本文化を知るためにも有益なので、一度は見ておきたい作品です。
鳥獣戯画はどこで見られる?
鳥獣人物戯画は日本国内に保存されており、全4巻のうち甲と丙が東京国立博物館に、乙と丁が京都国立博物館にあります。
常設展示されているわけではなく、時期によって特別公開されているので、鑑賞したいときは時期を見て行きましょう。
京都にある高山寺には、レプリカが展示されており、ここに行けば拝観料を払うことでいつでも鑑賞できます。
鳥獣戯画といえば有名な一枚があります。それは蛙と兎の相撲のシーンです。
声援する兎や蛙がいるなかで、蛙が兎を投げ飛ばし、蛙たちが笑い転げる瞬間が生き生きと描写されているところで、この場面は日本文化の結晶であり最も知られています。この場面は絵巻物のなかで第16紙後半から第18紙にかけて描かれている作品です。
さて、この場面は鳥獣戯画の甲巻に収録されています。甲巻は東京国立博物館に所蔵されています。
この他にも見るべきところは多数あるので、興味がある人はぜひ行ってみてください。
鳥獣戯画を見ていると漫画やアニメとの類似性に気づき、私達がキャラクターや物語に昔から親しんできたことが分かります。
漫画やアニメが好きな人や、自分たちの好きなもののルーツがどこにあるのか気になる人はきっと鳥獣戯画が興味深い作品となるでしょう。
日本文化を代表する国宝なので、一度は見ておいて損はない作品です。
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