わびさび、とは日本文化を理解するのに欠かせない概念ですが、その意味を理解している人は少ないのではないでしょうか。わびさびの本当の意味を知ることで、日本文化をより楽しむことができます。
わびさびの意味を知る
わびさびは今日では様々な日本文化に共通する美意識として理解されています。漢字で侘び、寂びと書き、ひとつの熟語的に使用されることの多い言葉ですが、実は侘びと寂びの概念は異なります。
侘びは飾りやおごりを捨てた簡素の中に清澄・閑寂な趣を見出そうとする心のあり方。寂びとは閑寂さの中に、奥深さや豊かなものがおのずと感じられる美しさとされています。
ちなみに、わびさびは英語でもwabi-sabi とそのまま用いられ、kimono などと同様に、日本語からの借用語として使われています。
わびさびの言葉から私たちが一般に連想するのは千利休の大成した茶道の世界観でしょう。でもそれ以前にわびさびに通じる美意識を大切にした源流ともいうべき文化が存在していたことをご存知ですか。
室町から戦国へ 戦乱の中に咲いた日本の美意識
1336年から200年以上続いた室町時代は、能、茶道、華道、庭園、建築、連歌など今日に続く様々な文化・芸術の勃興期でもあります。その中にあって禅の精神に基づく簡素さと、幽玄・わびさびの美意識を基調とした文化を東山文化と呼んでいます。
この名称は八代将軍足利義政(1436年-1490年)が築いた京都の東山山荘を中心に、武家、公家、禅僧らの文化が融合して生まれたことに由来しています。東山文化を代表する建築としては銀閣寺(慈照寺)が有名です。一方、金閣寺に代表される貴族的で華麗な文化を北山文化と呼んでいます。
室町の末期から日本国内は戦乱の渦に巻き込まれていきますが、当時の大名たちは戦いの明け暮れの中にも文化的なことを大切にしていた傾向があります。残されている武将の書には見事な筆致が珍しくありません。
また明智光秀は歌人としても名を知られ、伊達政宗は料理に精通していたと伝えられています。茶道の世界では茶人大名として有名な古田織部、織田信長、そして千利休との確執でも知られる豊臣秀吉もまた茶の世界を愛した一人でした。
文化に国境なんかない たぶん
書道の世界には余白の美という言葉があり、剣道にも残心という教えがあります。これはどちらも表面的には表れない奥深い精神のあり方に由来する言葉。わびさびの心にも通じるものではないでしょうか。
日本の文化の底流ともいうべきわびさびの概念を外国人には理解できない日本特有の美意識と考える人もいますが、本当にそうなのでしょうか。
ルネサンスの巨人レオナルド・ダ・ヴィンチは”シンプルさは究極の洗練である”という言葉を残しています。
また、銀閣寺に代表される東山文化には、フランク・ロイド・ライトの提唱した有機的建築にも通じるものがあると言ったら飛躍しすぎでしょうか。アメリカなどでは禅の影響が強い武士道の精神はイギリスのノブレス・オブリージュに通じるものがあるいう意見さえあります。
異なる文化で育った同士は、ここは似ているねとか、そんな考えがあったんだと言いながら、共通の新しい何かを作っていく、地球の文化もそろそろそんなレベルが似合うようになってきたんじゃないですかね。私たち一人ひとりが文化を伝える人となるために、もう一度日本のわびさびの文化を学んでみる。そんなのはどうですか。
鎌倉の名刹でわびさびの源流に通じる禅の世界を体験する
江戸の昔、女人救済の駆け込み寺として知られた「東慶寺」は、約720年の歴史を誇る臨済宗円覚寺派の禅寺です。古都、鎌倉の歴史を感じさせる静けさの中、禅の世界に通じるわびさびの美意識にふれる各種日本文化の体験教室が開催されています。
茶道
かつての尼寺の風情を残し四季折々の花々が咲く庭に佇む茶室「寒雲亭」で、武者小路千家の指導の元、本格的な茶道を学ぶことができます。
坐禅会
坐禅経験者対象の早朝坐禅会、初めての方の日曜坐禅会を開催しています。
写経
香道
本物の香木の香りを聞き分ける競技形式の「組香」が体験できます。
挿し花
花を生けるときの基礎知識を学習できる挿し花の体験教室です。
東慶寺
住所:神奈川県鎌倉市山ノ内1367
TEL.0467-22-1663
https://tokeiji.com/
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