日本では旅行を指す際に、観光あるいはツーリズムという言葉を使用しますが、どちらも同じ意味として扱われることが多いです。ただ、厳密には、観光とツーリズムで意味が異なります。そして、経験できることも違います。では、具体的にどういった違いがあるのか、観光とツーリズムそれぞれの例を交えながら解説していきます。
娯楽の意味合いが強い観光
観光とツーリズムはどちらも、旅行を指す言葉として使用されます。ただ、観光の場合は、娯楽の意味合いが強いです。旅行では、有名なスポットを見て回ったり、名産品を試食したり、民謡を聞いたりするなど、色々なことを体験するでしょう。それら全てが、楽しむことが目的であった場合、その旅行は観光という扱いになります。あくまでも娯楽が目的であるため、現地での文化や周囲の環境について、深く知ることはあまりないでしょう。
また、観光は、ただ見て回るだけの旅行という意味でも使用されることがあります。元々旅行というものは、特に体験をするものではなく、見て回ることがほとんどでした。その際には観光という言葉が使用されていたため、見て回る旅行が観光と呼ばれる形です。つまり、観光は見て回る旅行が中心で、体験をするとしても、そこまで深い部分について学ぶことはないものだと考えると良いでしょう。
具体的な例を挙げるとすると、京都の寺院を見て回る、富士山を眺めるといった旅行は、観光扱いとなります。京都の寺院を見て回ったとしても、旅行中に寺院の歴史を深く学習したり、建築様式を調べたりすることはないはずです。また、富士山に関しても、歴史や地質について学ぶことはないでしょう。あくまでも寺院や富士山の景色や、その場所の雰囲気を楽しむための旅行なので、観光扱いとなります。
広い意味があるツーリズム
ツーリズムは、英語のTourismを語源とした言葉で、旅行全般を指します。つまり、観光よりも範囲が広いです。そして、何らかのテーマがある旅行を指すことが多いです。学習や研究などをテーマとした旅行は、厳密には観光ではなくツーリズムという扱いになります。娯楽が主な目的ではないにもかかわらず、観光と言ってしまうと、真剣ではないのではないかと疑われかねないので注意が必要です。
そして、ツーリズムは、テーマによって色々な種類に分かれることが多いです。中でも代表的なのはエコツーリズムで、自然について学習する旅行を指します。屋久島で原生林の中を歩いて回ったり、沖縄でホエールウォッチングをしたりするなど、エコツーリズムの中でも色々な旅行に分かれます。その他にも、現地の織物や工芸品などの文化を学ぶためのエスニックツーリズムや、最新の工業技術を知るために工業地帯に訪れるインダストリアルツーリズムなど、ツーリズムには多種多様な種類があります。
そういった、何らかのテーマがある旅行は、従来の観光と区別をするために、ニューツーリズムと呼ばれることも珍しくありません。ツーリズムだけだと、観光と混同される恐れがあるため、「ニュー」を付け足した言葉です。そのため、観光ではなく、テーマを伴った旅行だということをアピールしたい場合は、ニューツーリズムを使用した方が無難でしょう。
そして、ツーリズムの範囲は非常に広く、観光はその中の一部だと考えて問題ありません。楽しむことを目的としたツーリズムは、観光として扱うことができます。実際に、旅先での食文化を楽しむことを目的とした旅行は、フードツーリズムと呼ばれることが多いです。フードツーリズムでは、もちろん旅先の食材や調理法などを学ぶという意味合いもありますが、楽しむことが主な目的です。つまり、観光の要素が大きいですが、ツーリズムとして扱われます。
主な目的に応じて使い分ける
観光とツーリズムは、意味が混同される場合が多いですが、混同することが必ずしも間違いというわけではありません。学習や研究目的のツーリズムを観光と呼ぶのは間違いですが、娯楽目的の観光をツーリズムと呼ぶことは可能です。そして、旅行は、観光とツーリズムの両方の要素を併せ持っている場合もあります。もし、娯楽目的の旅行と、それ以外のテーマがある旅行を区別するのであれば、観光とニューツーリズムを使い分けると良いでしょう。ニューツーリズムは、観光の意味合いで使用されることがないため、意味が伝わりやすいはずです。
また、旅行の中には、学習や研究などがメインテーマでありながら、娯楽が伴っているものもあります。そういった旅行は、ツーリズムと呼んで問題はありません。それと同じように、娯楽目的でありながら、道中で学習することがあった旅行は、観光として扱うのが基本です。あくまでも、何を主な目的とした旅行なのかによって、観光とツーリズムと使い分けましょう。
厳密には範囲が異なる観光とツーリズム
現代では、観光とツーリズムは、いずれも同じ意味の言葉として使用される場合が多いです。そのため、それぞれを置き換えて使ったとしても、特に間違いだと指摘されることはないでしょう。しかし、厳密には意味が異なります。そのため、娯楽の場合は観光、体験の意味合いが強ければツーリズムと、状況に応じて使い分けた方が良いです。
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