私たちが一般に“酒”と呼んでいるアルコール飲料には醸造酒と蒸留酒があります。蒸留酒にはウイスキーを筆頭に、バーボン、ブランデー、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ、グラッパ、東南アジアのアラック、日本の焼酎や泡盛など沢山の種類があります。
一方、醸造酒ではビールとワインが世界の市場を2分する大勢力として君臨していました。しかし、その市場に今、新たな勢力が台頭しつつあります。2000年代に入ってから国際市場で急速に認知度を高めているその主役こそ英語でSAKEと表記される日本酒です。寿司に代表される日本食の世界的な人気に伴い、2006年以降輸出量の伸びも平均6.7%と高い数字を示しています。
さらに和食の「ユネスコ無形文化遺産」登録やオリンピック開催国への興味と相まって日本酒人気はさらに拡大。ニューヨークやパリでは食前酒として日本酒をセレクトする光景もおなじみのものとなっているようです。
Hot Sakeの楽しみ
国際的に見るとスウェーデンの「グルッグ」やフランスでの「ヴァンショー」など一部ワインでのそれを除き、アルコール飲料を温めて飲む習慣は決してポピュラーなものではありません。そんな世界の常識を変えたのが“燗酒”という日本酒ならではの味わい方。日本通を任ずる人々の間ではHot Sakeという用語もすっかり定着した感があります。 燗酒の効果としては、甘味を強め、苦味・辛味を抑える、味わいが膨らみ、本来の酒質以上に軽く感じられるなどの特徴があります。日本酒の種類によっても向くもの向かないものがありますが、一般的に純米酒や山廃造り、本醸造などが燗酒に向くタイプとされています。寒い季節などには、新しい味わいを求めていろいろと試してみるのもいいでしょう。
飲むべき日本酒
近年の日本酒といえば、日本酒の味の潮流を変えた「芳醇旨口」の代表格でもある「十四代」や昨年末ニューヨークに酒蔵を造ると発表したことでも話題を撒いた、純米大吟醸酒の「獺祭」が有名ですが、その他にも飲むべき、味わうべき日本酒のラインナップは多士済々。そのなかからタビノト編集部がセレクトした5品種をご紹介します。
加茂錦荷札酒純米大吟醸無濾過仲汲み「東条産山田錦」
米どころ新潟の伝統酒蔵から2016年に誕生したばかりの新ブランド。25歳の若き杜氏が醸す純米大吟醸。淡麗・清涼でありながら、米本来の甘みと酸のバランス、ボリューム感を大切にしたモダンな味わいが特徴。「SAKE CONPETITION」をはじめとする審査会でも高い評価を得ています。
ソガペールエフィス
ヌメロアン(1号酵母)、ドゥー(2号酵母)、トロワ(3号酵母)、キャトル(4号酵母)、サンク(5号酵母)、サケ・エロティック ヌメロシス(6号酵母)の各種
長野の小布施ワイナリーが、ワイン造りが終わった冬に極少量を生産したことでも話題になったニューウェーブ日本酒。ブルゴーニュワインの製法と同様、地元長野産美山錦のみを使用、培養酵母に頼らない古典酵母の使用、全量生酛仕込み、無添加醸造など徹底した姿勢に拘った数量限定の貴重品。機会があれば1〜6号酵母による味の違いも確かめてみたいところです。
醸し人九平次 「純米大吟醸 別誂」
ミシュランガイドの三ツ星レストランワインリストにも並ぶ蔵元から1997年ブランド。なかでも「純米大吟醸 別誂」は甘みと酸味のバランスに優れ、良い意味での日本酒離れを感じさせる香りが特徴。アンデスメロン、洋ナシ、リンゴの皮の香り、ほのかにライチや木の葉、ヒノキの香り。和食はもちろんですが、乳製品やクリームを使った料理などフレンチとのマリアージュも楽しめます。
新政PRIVATE LAB プライベートラボシリーズ
1852年創業、秋田の老舗によるチャレンジ。仕込み時の水の一部を酒に置き換えることで濃厚さと甘みの強さを引き出した貴醸酒「陽乃鳥」。清酒用麹と焼酎用麹(白麹)で醸すことにより、日本酒離れした酸味を引き出した白麹仕込純米酒「亜麻猫」。瓶内二次発酵による薄にごりの低アルコール発泡性清酒で、 軽快な飲み口や甘酸っぱさ、ガス感が日本酒ビギナーにも好評の低酒精発泡純米酒「天蛙」。常識にとらわれない斬新な発想と手法で作られるプライベートラボシリーズは次世代日本酒への期待に満ちています。
鍋島
2011年の世界的なワインコンテストIWC「SAKE部門」で最高賞の栄誉に輝いた「鍋島 大吟醸」に代表される佐賀富久千代酒造のブランドです。2017年にはIWC本醸造部門・純米吟醸酒部門の2部門で金賞を獲得するなど多数の栄誉に輝いたことでも知られる佐賀県の酒蔵。日本酒初心者向けとしては、香味のバランスに優れた「鍋島純米吟醸山田錦」がお薦めです。
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