日本語は、古くから日本にある「和語」と中国や外国から入ってきた漢語・外来語に区別されることを知っていますか?日本語の基本語は、「やまとことば」ともいわれる「和語」になります。現代の日本語では、音読みする言葉も多く、漢語が使用される割合も高いですが、それでも、日常よく用いられる言葉は和語が多いとされています。
旅行は漢語?叙情的な文にみられる和語について
「和語」を字から解釈すると「日本のことば」になるでしょう。一方、「漢語」は「中国のことば」を指し、基本的に音読みされます。そのため、音読みする語を「漢語」、訓読みする語を「和語」と区別して考えればいいでしょう。ところで、「旅行」という言葉は何語に当たるのかというと、音読みの語であるため「漢語」にあたります。また、中国語にある「旅」と「行」の字をもとに成り立った熟語です。
一方、日本でつくられた字でありながら、音読みすることから漢語と思われている熟語もあります。「火事(かじ)」という言葉がありますが、これは和語の「ひのこと」を漢字で表したものです。つまり、「火事」を音読みすることで、「かじ」と読まれるようになりました。また、一般的に、日本と中国ともにあって、どちらで先に成り立ったのかわからない字もあるため、その語源についてほとんど触れず、音読みの語は「漢語」、訓読みの語は「和語」とされています。ただ、音・訓読みする字の両方を含む熟語については、基本的に和語に分類されるようです。
和語は、歌詞や詩など叙情的な表現する文のなかに多くみられます。たとえば、日本人に馴染み深い「ふるさと」の歌詞をあげましょう。「うさぎ追いしかの山こぶな釣りしかの川夢はいまもめぐりて忘れがたきふるさと」この歌詞のなかにどれくらい和語が含まれているかいうと、100パーセントです。「ふるさと」は、ある小学校の唱歌として発表され、のちに音楽の教科書で多く用いられる日本を代表する歌ともいえます。この歌がつくられた1914年(大正3年)、その当時の文学者は漢語についても精通していたといわれていますが、この歌詞では漢語が一切使われていないといったことも、興味深い点です。この歌詞をつくった人物が、あえて日本の情緒を表現するためにそうしたのか、それとも日本人が本来持ち合わせている「やまとことば」和語が、自然と文章に表されたのかもしれません。この歌詞にもあるように、和語には複数の漢字から成る熟語以外に、漢字で表記されない字も多くあります。
江戸時代のころまで和語は文に多く用いられていた
日本語として成立している漢字ですが、もともと中国からきた文字になります。日本は漢字をより自由に用いていたため、漢字を本来の読み方とは違う訓読みすることが定着しました。まず、漢字一字を書いて表す表語文字の方が、声に出す音で表現する表音文字よりも、意味を理解しやすいということがいえます。たとえば、ひらがなで「かわ」と書くことはできるけど、漢字で「川」と書くこともできるため、一字一字音を声に出して字をイメージするよりも、実際の字をみて意味を判別する方がスムーズでしょう。これは、漢字だけを見ていくことで意味を理解でき、速くよむことができるというメリットがあることになります。
それと同様に、訓読みは、その字を理解する上で本来の音読みする方法より便利だったといえるでしょう。そのため、中国から入ってきた漢字を訓読みする方法が日本で定着しました。平安時代以降から訓読みが用いられ、庶民が教育を受けるようになった江戸時代には定着しました。それと併行して、明治時代以降の西洋化にともない、より多く漢語が使われるようになったことで、江戸時代・明治時代を境に、それまで文章に多く使われていた和語が漢語に置き換わってしまったといわれています。つまり、中国から入ってきた漢字が日本語読みといわれる訓読みがされるようになったあと、江戸時代・明治時代を境に和語から音読みする漢語が多く用いられるようになったということです。
たとえば、日本語のなかに漢語がよく見られる例として、新聞やアナウンスされるニュースの内容などがあげられます。まず、新聞については、その限られた紙面のなかにできるだけ多くの情報を載せるため、漢語が多用されています。そして、ニュースについては、制限された時間内に視聴者に対して分かりやすく多くの情報を伝えるため、漢語が使用されているのです。また、新聞やニュースでは、和語としてはっきり伝えることのできないような、抽象的でいて、小難しい内容が扱われることが多いです。そういった内容の文を、漢語を使わずに和語だけで表現しようとすると、相手にスムーズに伝わらないといったことがあるため、和語の使用頻度がだんだんと低くなっていったのかもしれません。
和語から感じとれるもの
漢字以外に、古くから日本で使われていた日本語については、どこから渡ってきた言語をもとにしているのか、詳細にわかっていないことも多いです。あいまいなところが多い日本語ではありますが、昔から使われている和語を耳にしたとき、落ち着いた気分になったり、情緒的なものを感じたりするのは、日本の地に生まれ育ったからかもしれません。
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