日本は地域それぞれにしきたりが異なる国で、豊かな文化を確認できる特徴があります。
海に面した地域では海産物の加工品が盛んに製造されており、中でも海の幸が多く獲れる富山県では結婚などのお祝い事での引き出物として鯛のかまぼこを送る習慣があります。ただしその大きさは尋常ではなく、優勝祝いの力士が手に持つ大ダイよりも大きめ、さらに色もたいへんカラフルなものになっているのです。
そもそも何故鯛のかまぼこなのか
めでたい出来事の際の定番の贈り物として全国各地で鯛は選ばれていますが、それは富山県でもそうでした。実際、日本海に面して海産物が多く獲れる富山県では地引網等で鯛がたくさん獲れることも珍しくなく、かつては、漁の様子を見物に来るような人々もいたようです。ただし天候不順などで不漁が続く期間もあったようで、一説によるとそういった鯛不足の時に代用品として白身魚の身をつかって鯛のかまぼこを作ったのが始まりとされ、やがては地域における定番の引き出物となっていくことになったのです。
またそうなると他の業者よりも豪勢で派手、きめ細かな細工を施すような競争も生まれていき、現在では鮮やかな色味と彫刻のような仕上がりを特徴とするまるで工芸品のような品物となりました。
冷蔵技術がないような時代では生の魚ではすぐに傷んでしまいますし、保存するという意味でもかまぼこに加工する発想は無理がなく、今でも多くの方に親しまれるが特徴となっているのです。
富山県のかまぼこが大きいのには訳があった
また富山県の鯛のかまぼこは片手ではとても持ち運べないほどの大きさともなっています。重量は一般的なものでも数キログラム、それだけで普通の巻きかまぼこ数十個分にも及びますので、正直そこまで大きなものをいただいても、よほどのかまぼこ好き以外では食べ切るのも一苦労です。
これは、お祝い事・めでたい出来事を近隣の方といっしょにシェアするような文化や風習がかつて存在していたことを示すものでもあり、富山県では、あまり親交のない家の結婚が近所であった場合でも、すぐに分かってしまうほど、人々の距離が近かったのです。
都心部などと比較すると現在でも濃密な人間関係の名残はありますが、それでも少子化や核家族化は少しずつですが進行しており、そういった社会構造の変遷に合わせて大きいだけではなく、小ぶりなサイズの鯛のかまぼこも最近は各販売店で見かけるようになっています。
鯛以外にも鶴や亀といった縁起物、その他のオリジナルデザインが楽しめるのも現在の富山のかまぼこ文化となっています。
工夫次第で味わいの幅も拡がります
富山は海産物の宝庫であり、かまぼこの原材料も新鮮な魚介を用いて作られています。ですので出来立てのかまぼこの味わいは非常に深み、そして甘味があり、魚の旨みが凝縮されているのが特徴です。日持ちする海産物加工品に多く見られるような淡白で大味な印象を全く感じることがありません。ただし日持ちするとはいってもせいぜいが冷蔵庫で数週間ですし、日が経つと旨みが抜けていってしまうのも事実です。また生食ではいつも同じ味です。正直に言ってしまうと飽きてしまうこともあります。
ただ、素材はしっかりしたものなので、ちょっとした工夫を凝らすとさらに美味しく食べることができるおすすめの方法があります。
他の水産加工品でも多く選ばれる方法ですが、フライパンで焼き目が入るまで焼き上げるとアツアツの食感と香ばしい香りが一緒に味わえますし、揚げたりするのも美味しく食べるポイントです。お酒の肴としても、ご飯のお供としても幅広く利用できるので、ぜひ参考にしてみてください。
日本海に面した富山県では様々な水産加工品が作られていますが、中でも見た目のインパクトが最も強烈なのがこの鯛のかまぼこです。
お祝い事をシェアしていた日本古来の風習と共に、いつまでも残していきたい日本の古き良き伝統です。皆さんも機会があればぜひ味わってみてください。
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