多彩なコンテンツで世界にアピールする国。日本
大陸から程よい距離を隔てた島国という立地を背景に、独自の文化を発展させてきた日本。この国を訪れる外国人の目的は様々です。歴史や伝統への興味、マンガ・アニメの聖地巡礼、買い物、食文化、芸術芸能、職人技、最先端の科学技術など数え上げれば限りないほどです。
昨年度、日本を訪れた外国人客の総数は前年比19.3%増の2,869万人。街なかで英語以外の外国語を目や耳にすることも当たり前となりました。では、そんな外国人たちが日本に落とすお金はというと、こちらは初の4兆円を突破し前年比17.8%増の4兆4161億円。
ただし、一人あたりの支出はというと前年より微減の15万円台前半。これは滞在期間が短い韓国からの観光客の増大に由来するものと考えられています。
今考えておくべき五輪後不況という課題
2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けて今後もさらに上昇すると予想される訪日外国客ですが、ここで気になることがひとつ。オリンピック・パラリンピックなどの国際的なビッグイベントが終わった後、景気上昇の揺り戻しのように訪れる経済不況です。
遠い過去の話と笑われるかもしれませんが、高度成長期の1964年に行われた東京オリンピックの翌年には「昭和40年不況」と呼ばれる景気後退を余儀なくされました。この五輪後不況と呼ばれる景気の減速は、過去の日本だけに限定される話ではありません。ギリシャでは2004年の五輪開催が2010年の経済危機の一因ともされています。
また、前回のブラジル・リオでは、五輪後どころか開催前に経済の減速が始まったほどです。
このマイナス現象はインバウンドにどのような影響を与えるのでしょう。
観光庁スポーツ観光推進室がまとめた資料「過去のオリンピック・パラリンピックにおける観光の状況」によれば、開催国のインバウンド需要は開催決定後長期間にわたって喚起される傾向にあることが指摘されています。とはいえ、開催の翌年には落ち込むことがほとんどですが、2012年のロンドンでは開催年より翌年の訪英客の方が増えています。この好サイクルの背景として考えられるのが、イギリスが五輪開催と連動して展開した大規模なマーケティングや数々のPR活動です。
その結果、イギリスは世界主要50か国を対象とした「総合的な国家ブランド」ランキングで、順位を上げ4位にランクイン。また、訪英客へのアンケート調査によれば63%が、オリンピックのおかげで英国旅行への関心が高まったと回答。さらに75%が 、ロンドン以外の英国各地も訪れてみたいと回答しています。オリンピックは、サッカーワールドカップと並び世界の耳目を一点に集める国際的なイベントであると同時に開催地である都市・国家のブランド力を上げる絶好の機会でもあるのです。
日本の魅力を再定義するブランド戦略
東京オリンピック・パラリンピックの成果として私たちが手に入れるのは構造物やインフラ設備のバージョンアップだけではありません。何に魅力を見いだせるのか、楽しさ・面白さをどう訴求するかなど、日本を訪れる外国人に有形無形に関わらずどんな“お土産”を持ち帰ってもらえるのか。そこを確かめる盛大なプレゼンテーションでもあると思うのです。
東京オリンピック・パラリンピックでは、8月24日現在の段階で、東京以外にも神奈川県、千葉県、埼玉県、静岡県、宮城県、北海道が開催地として発表されています。これらの各地域でもブランド力を世界にアピールし観光需要を喚起する絶好のチャンスだと言えるでしょう。
クライアントを満足させ、日本ファンを続けてもらうために私たちができることとは。
次回は、外国人客の変化や民間企業の対応などを例にお話したいと思います。
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