文化・マナー・習慣

文化・マナー・習慣

日本映画の黄金時代を知るためのおすすめ映画Ⅱ東映編

2023年11月10日

関連キーワード:日本文化 映画 おすすめ 東映 

黄金時代の日本映画界では各映画会社にも明確な個性がありました。文芸作品・女性路線の作品が多かった松竹、時代劇・ガメラ・アクション・文芸作品となんでもありの大映。明るく楽しく、賑やかな東宝、無国籍アクションや恋愛路線の日活。そして通称“男の東映”こと、時代劇や任侠路線で男性ファンの目を釘付けににした東映といった具合です。シリーズ2回目の今回は東映にスポットをあててみましょう。

華麗な殺陣に任侠、実録 男性主張こそ東映の真骨頂

東映と聞けばマンガ祭りやドラゴンボールシリーズ、仮面ライダーなどアニメ・マンガ系の劇場版というイメージを持っている人も多いでしょう。最近では町田康原作の異色作「パンク侍、斬られて候」も話題になりました。しかし、全盛期の東映カラーはちょっととはいえ相当に強面。なにしろ男性スター中心で女優さんはあくまでも男性俳優の添え物的なポジションという極めて男性優位な作品を作り続けてきた会社なのです。
所属スターの名前を見ても、市川右太衛門片岡千恵蔵の両御大(この呼び方がまたすごい)を筆頭に、鶴田浩二萬屋錦之介(当時は中村錦之助)、大川橋蔵高倉健菅原文太梅宮辰夫松方弘樹北大路欣也と男臭さがムンムン。対して女優陣はとなると丘さとみ花園ひろみ桜町弘子などの俗に言うお姫様女優が主な人々。別格として美空ひばりがいますが、これは自社の俳優と言うより歌手としての人気を当て込んだキャスティング。やはり圧倒的な男性路線が東映の特長です。

時代劇といえば東映と呼ばれたあの頃

観光地としても人気の東映太秦映画村はもともと東映京都撮影所の一部分を一般公開しているテーマパーク。ここでは時代劇華やかなりし頃の名作の数々が作られました。
東宝の項でも紹介しましたが東映でもメインの作品となったのはシリーズもの。旗本退屈男水戸黄門新吾十番勝負宮本武蔵次郎長三国志などの作品が有名です。
その中で異色作としてオススメしたいのが松方弘樹・北大路欣也が、助さん格さんを演じた「水戸黄門 助さん格さん大暴れ」。そのハチャメチャぶりはいっそカルトムービーと呼びたいほどの快作です。時代劇なのかそれとも時代劇のふりをした近代劇なのか、と思わず頭をひねるほど。タイトルの通り、若さ絶頂の二人が大暴れ。しかも二人共“エッ?これがあの人”と思うほどのイケメンぶり。松方弘樹に至っては、すねたり甘えたり、後年のイメージとは大違いで妙にカワイイときているのです。
重厚な作品がお好みならば萬屋錦之介の「宮本武蔵」。迫力のある殺陣シーンは今の映画では見られないほど一種美しさに満ちています。当時の女性ファンを熱狂させた大川橋蔵作品も機会があれば見てみたいもの。強さとナイーブさを併せ持つ「新吾十番勝負」の苦悩、明るくいっそ健康的な「若さま侍捕物帳」などもっと再評価されてもいいとは思うのですが。う〜む残念。

歌って踊るは東宝だけではなかった東映の歌入り時代劇

時代劇に歌?と聞くと水戸黄門のあの人生教訓的歌詞を思い出す人もいるでしょうが、時代劇イケイケ時代の東映は一味違います。前出の美空ひばりが主演した映画などは本来が歌手ですから歌って当たり前なのですが、他の作品も負けてはいません。
鶴田浩二主演の「次郎長三国志」シリーズでは、鶴田浩二以下松方弘樹、山城新伍などが旅姿で街道を歩きながら楽しそうにコーラスです。バックに登場する茶摘み娘も歌います。この歌とストーリーがいいテンポというか効果的にドラマを盛り上げているのにも注目です。時代劇と歌と言えば“狸ミュージカル”というジャンルがかつて日本映画にありました。1939年の「狸御殿」(新興キネマ)にはじまり、各社共作というか乱立というべきか大映、松竹、東映、新東宝、東宝と大手がこぞって公開したこの意欲作?人間に化けた狸が歌って踊って恋をするという自由奔放ぶり。今の時代に制作するとしたらどんな感じになるんでしょう。怖いような楽しみのような‥‥。
さて、ちょっと長くなってしまいました。この続き、東映任侠・実録路線についてはまた別の機会に。

この記事に関するキーワード

関連記事

このページ先頭