これまでの日本の大学教育では1、2年時は教養課程、3、4年時を専門課程とするカリキュラムの構成が大勢を占めていました。頑張っていい大学に合格したら、1、2年生の間はたっぷり楽しんで、3年生になったら就職の準備をする。それが以前の大学に対する一般的な認識でした。しかしその様相はここ数年大きくイメージを変えました。
インターネットの進展や急速なグローバル化は、旧来の就職や仕事に対する考え方を根本から変化させようとしています。この環境変化の中で、社会人に求められる英語には日常会話や単なるビジネスのやり取りにとどまらないコミュニケーションツールとしての能力が求められています。
英語はすでにできて当たり前、ビジネスの場や海外の人々とのコミュニケーションの場で、自分を主張し、実力を認めさせ尊敬を受けるための知識や知的能力、センス、文化への素養など総合力が求められているのです。欧米人との付き合いの中で、自分のアイデンティティである国の文化や仕組み、歴史などについて意見を交換することは国際間コミュニケーションの基本とも言うべきものです。
注目を集めるリベラル・アーツ教育
従来の教養課程ではなく、リベラル・アーツに力点をおいた大学教育の重要性が改めてクローズアップされています。
liberalとarts。それぞれの語を直訳すると自由と芸術。これを熟語として読むと学芸となります。リベラル・アーツの語源はギリシャ・ローマ時代の「自由7科」(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)。人が自由な発想で自分らしく生きるための技術を指す言葉です。私たちの社会には、様々な評価基準があります。その渦中で常に正解が求められるとき、人は自分の意見ではなく大きな流れに従ってしまう傾向があります。するとそこに不自由が生まれ、未来を切り開くために必要な創造性を欠く人間となってしまうのです。
リベラル・アーツとは極論してしまえばぶれない自分を作るための知性や教養。自分なりの判断基準を養成するための学問なのです。伝統や先人の築いたものを次世代に受け継ぐのも大切なことですが、新しい考え今までにない価値の創造などクリエイティブな能力の発露が求められているのです。国際社会とは異なる文化の出会いであり、ときには戦いの場でもあります。
リベラル・アーツとは何かを問う立教大学の試み
リベラル・アーツ教育に力を注ぐ大学教育システムのひとつに立教大学が推進するGLAP(Global Liberal Arts Program)があります。立教大学ではそのコンセプトを「自ら考え、行動し、得た知識や仕組みを共有し、世界の人々と共に国際的な規模で実現していくリーダーの育成」としています。
GLAPでは授業にしても英語を学ぶのではなく、英語で学ぶことが基本となっています。また、1年生から2年生の前半まではGLAP生・留学生が共に暮らす全寮制を採用することで、生活のあらゆる場面で英語を主体とした交流が図れる環境が用意されています。少人数制の環境で学び、生活の場を共に過ごすことは、国際交流に不可欠なコミュニケーション能力にも大きな影響を与えます。
近年、高校卒業後直接海外の大学へ留学する学生が減っています。その背景には英語力以外の困難もあり、いきなりの留学では挫折してしまう例が少なくないこと、またそんな失敗例の情報が行動を躊躇させているという事実があります。日本にキャンパスを持つ、日本の大学で必要な準備段階としての学びを収めることは、決して回り道ではありません。むしろ、安心・確実な学びの場への留学を可能とする手段としても有効なのです。また、提携先となるアメリカのリベラルアーツ系の大学は、大学院への進学率も高く、海外での学びのチャンスが広がるというメリットもあります。
大学で学ぶ目的は就職という近未来だけに限りません。自分が何をやりたいのか、また自分という存在を活かすための生き方を探るための学び、新しい未来を想像するために力を身につけるための時間であり場所ではないでしょうか。
立教大学以外にも多くの国公立・私立大学でリベラル・アーツに類する教育課程を設ける大学が増えています。国際社会での活躍を希望する方は、ぜひ各大学の教育姿勢やシステムの特徴を調べ検討してみてはどうでしょう。
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