日本文化の歴史を掘り下げてみると、中国の文化を起源とするものが少なくありません。今もなお受け継がれている日本文化の中には、中国ではすでに失われてしまった文化も含まれています。そのため、かつての中国を見るために、中国からやって来る訪日観光客もいるくらいです。今回は、日本文化を語る上では欠かせない中国との密接な関わりを紹介しましょう。
なぜ伝統的な日本文化は中国を起源としているものが多いのか
日本文化として認知されているものには、中国を起源とするものがあります。その理由の一つが、日本の歴史よりも中国の歴史の方が古いことです。大和王権が、日本最初の統一国家として成立したのは4世紀から7世紀にかけてと言われています。それまでの日本は、小さな国がいたるところにある状態でしかありません。一方で中国で最古であるとされる夏王朝は、紀元前21世紀には成立していたと考えられます。歴史が古い中国が日本よりも洗練され進んだ文化を持つことは自然のことです。国として若い日本が、中国文化を手本とするために吸収し自分のものとしていきました。 中国が日本文化の起源となった理由を、歴史以外にも挙げるならば地理的な要因も考えられます。中国とヨーロッパを結ぶシルクロードは、東西の文化が行き交う古代の交易路です。そのため、シルクロードで行われる交易が盛んであった頃の中国は、最先端のモノや知識が集まりました。シルクロードがつくりだした交易文化は、海を隔てた日本へも届いたため日本文化にも少なからぬ影響を与える結果となりました。それを裏付ける証拠とされるのが、奈良の正倉院に収蔵されているシルクロードを通じて日本にやってきた品々です。中国を遥かに超えた東南アジアや中近東の品が現在も大切に保管されています。
季節の変化を感じる日本文化は中国に起源がある
日本文化と中国文化の持つ密接な関わりを生活の中で探そうとするならば、暦を確認すると良いでしょう。日本で現在使われている暦は、太陽暦といって明治時代に採用された西洋の暦です。それまでは、太陰暦といって中国から伝わった暦が使われていました。その太陰暦で行われていた行事は、太陽暦にも残されており季節の変化を感じる日本文化として定着しています。例えば、ひな祭りである桃の節句やこどもの日である端午の節句は中国を起源とする行事です。今では雛飾りや五月人形を飾り子供の健康を祈っていますが、本来は季節の節目となる行事でした。日本の気候風土や生活習慣にあわせて、中国の節句と似ているようで異なるものになっています。 端午の節句について見てみると、滝を登った鯉が龍になる登竜門という故事にちなみ鯉のぼりを掲げる風習が馴染み深いでしょう。しかし、その故事は中国のものでありながら、端午の節句に鯉のぼりを飾る風習は中国にありません。中国を起源とした行事に、中国の故事を参考にしたアレンジを加えることで異なる文化へと昇華させています。こうした変化が起きることが、日本文化の特徴と言えるでしょう。 現代では、暦における季節の行事を祝日とだけしか捉えていない人も少なくありません。しかし、中国に起源があることを知ったならば、行事が持っていた本来の意味と日本における変化を調べてみるのも一興です。行事に関する知識を深めることができたとき、古くから受け継がれてきた風習を正しい形で行うこともできるでしょう。
中国を起源とした日本文化が見つかる場所
中国では、隋・唐の文化が日本にあると言われています。これは、シンプルに意味を考えれば、日本が中国の文化を現在まで受け継いていることを褒めている言葉といえるでしょう。しかし、その背景には、中国人の嘆きが隠れています。中国は、古くから権力を求めて戦乱が続き、古い王朝の文化が新しい王朝によって壊されてしまうことも少なくありません。また、ときに文化を破壊するような政治運動も起こったために、古い中国文化の多くが失われてしまいました。そのような事情があることを考えれば、日本文化を残すことは中国文化を残すこと役立つと言えるでしょう。 日本文化の中で、隋・唐の面影を探そうとするならば、最適な場所はどこかというと古き良き日本を感じられる京都でしょう。それは平城京・平安京は、隋・唐の都である長安をモデルとしていることが理由になります。京都が長安を参考にした部分はどこかというと、特徴的な町割りです。京都の地図を見ると、碁盤目状に整然と町割りが行われていることがわかります。碁盤目状の町割りは、条坊制というもので風水や儒教の考えが基になっています。また、京都にある古い建築物にも、隋・唐の様式が採用されており、寺社の装飾や壁に古い中国を感じることができるでしょう。京都を観光で訪れるときには、起源となった隋・唐の文化を探せばより理解を深めることができます。
中国に起源を持つ日本文化のこれから
クールジャパン戦略で見られるように、日本文化は世界に発信されています。しかし、「美しさ」や「かっこよさ」ばかりを強調して、歴史的な背景を忘れてしまえば日本文化が持つ魅力は損なわれてしまうでしょう。日本人が何気なく触れている日本文化の起源が中国にあることを理解した上で、海外に発信したり保存したりする努力が求められます。
この記事に関するキーワード
関連記事