観光立国日本のいま。そしてこれから
観光庁が発表した平成28年度の「訪日外国人の消費動向」によれば、日本を訪れた外国人客の満足度は90%以上。うち50.4%が“大変満足”と回答しています。機会があれば再訪したいと答えたリピーター候補は90%以上、必ず訪れたいという積極派59.3%と満足度の高さを裏付けています。
国別の構成比で、中国・韓国を筆頭としたアジア圏からの観光客の多さは実感としてよくわかるところですが、意外な伸び率を示しているのがロシアです。人数こそ8万人弱とまだまだ微々たるものですが、2016年度から2017年度に掛けての年間伸び率は40.8%と韓国の40.3%を抜いて堂々の第一位。GDP(国内総生産)第10位というだけでなく、国境を接する地理的環境からも今後のインバウンド需要が気になるところです。
爆買いの終わり。新しい価値の始まり
さて、ここへ来て訪日外国人の主流となっている中国人観光客の消費傾向に変化が表れているようです。
その移り変わりを象徴するのが、大勢の中国人観光客が押し寄せる爆買いで有名となったラオックス銀座店の閉店(8月末予定)です。
2015年にピークを迎えた売上は、中国政府による通称“爆買い関税”の導入などにより激減。従来の団体客を想定した売れ筋商品を並べておくだけで売れるといった店作りでは現状に合わなくなってきたことが理由とされています。
この傾向、バブル以前の日本の海外旅行シーンとどこか似てはいないでしょうか。エコノミック・アニマルなどと揶揄された当時の海外旅行といえば、目的の多くは買い物。お金は持っているけれど・・・と海外から批判されていたことも事実です。その後少し余裕ができてからは文化や歴史などに目を向ける余裕が生まれたのです。
余裕が生まれるとただ単に値段が安いというだけの理由では満足できなくなります。少々値段は高くともそれに見合った品質やサービスの価値に眼が向かうようになるのです。
このサービスという価値を提供する企業として今注目を集めているのがあのドン・キホーテです。
満足度を高めるデジタル接客
品揃えや免税を含む価格対応、都心をはじめ主要都市を網羅する店舗ラインナップ、24時間営業を含む夜間営業体制など基本的な戦略はもちろんですが、各種の言語で表記されたPOPや英語、中国語、韓国語、タイ語に対応したコールセンター、WEBページ、さらには外国人専用カウンター、外貨レジ精算サービスなど外国人客の立場を考えたサービスの徹底ぶりは、財布の紐をゆるめさせるに値するワンストップサービスと言えそうです。その中でも全店に導入されたフリーWiFiを活用したデジタル化は外国人客のストレスを軽減させる重要なポイント。
商品を使用している様子の動画を配信したり、SNSで商品写真などの情報を共有したり、売り場の行く先々でおすすめ商品を表示するなどリアルタイムで購入チャンスを提案するなどの店内デジタル戦略が企画されています。
私たちが海外旅行で見知らぬ土地へ出かけるときも、スマホが情報獲得の重要な手段になることを考えればこれも納得の理屈です。
どこかアジア的なドンキ流の買い物の楽しさに新しい価値を提案するこのデジタル作戦。リピーターを増やすという目的からも、他の商業施設はもちろん、観光施設や自治体の観光課・観光協会なども見習うべき手法の一つと言えそうです。
日本的サービスのアクティベーション
日本流の接客サービスの象徴として心づくしという言葉があります。そのベースとなっているのは相手の立場に立って物事を考えるという発想です。
顧客が必要とするモノを提供するのはニーズへの対応、これに対し顧客の“これが欲しかった”に応えるのがウォンツの提供です。今後のブランド戦略にあたっては、滞在・宿泊・飲食・消費の全てに心地よさを提供するサービスのあり方が重要になってくると考えます。満足の先にある価値は、通り一遍のサービスではなく、よりパーソナルなものであるべきです。
名門とされる飲食店や旅館などでは、客それぞれの年齢や居住地、好みなどに合わせたきめ細やかな対応で常連というファンを育てています。その根底にあるのが顧客情報の把握と分析です。
従来は人のスキルに頼っていたこの顧客情報をビッグデータで解析・情報共有したり、先ほどのドンキホーテに見るようなデジタル対応を導入することで、新しい日本流サービスが生まれてくるのではないでしょうか。
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